しかし反撃もここまで

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俺のことだよバカヤロウ!RHYMESTER『POPLIFE』

Category: その他レビュー  
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・「マキタスポーツ」と創造のための破壊の時代

というエントリを前回書いた。
宇多丸師匠もマキタスポーツも、クリエイターであると同時に批評家でもある苦悩は相当だろうけど、商業的な意味でも音楽的な意味でも安易な道を選ばず、新しい地平を切り開こうとする誠実さと覚悟がある。

とかなんとか言う話を書いたところで今日、RHYMESTERの『POP LIFE』が発売された。

POP LIFEPOP LIFE
(2011/03/02)
RHYMESTER

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HIPHOP的にはとか、音楽史的にはとか、本人インタビューとか、評価とかレビューで星いくつとか、とりあえずどうでも良くて、とにかく俺にとっては、

『余計なお世話だバカヤロウ』が問題だ。


http://www.youtube.com/watch?v=Qj4sRjWS7wc
歌詞 http://www.kasi-time.com/item-52785.html


ラジオでオンエアされた際には、お気楽に爆笑しながら、

ライムスター新譜収録の『余計なお世話だバカヤロウ』最高。プロレスしかけてくる人やネット界隈に対してムキになって批判・反論するんじゃなく、文系HIPHOPという自分のフィールドで鮮やかに返すプロ根性、素晴らし過ぎる。 #kirakira
posted at 13:49:27



とか他人事みたいにツイートしちゃったけど、ちゃんと歌詞見たら、

これ思いっきり俺みたいな奴のことじゃん!!
だって俺、過去に宇多丸師匠絡みでこんなにエントリ書いてネタにしてるしヤバい逃げたい。

・TBSラジオ「キラ☆キラ」でsave the 小島慶子
・ライムスター「マニフェスト」がイカ酢
・映画のアトラクション化の可能性
・「町山智浩帰国トークライブ」 映画評論家を名乗ることの覚悟、素人としての節度と価値
・「ハートロッカー」を巡る論争に思う

その上Twitter上でも、

「KO・KO・U~孤高~」で提案された「孤高/孤低」の概念は面白い。いわゆる「おひとりさま」問題で言うと、上野千鶴子は孤高、踊らされて金も地縁も血縁もない人は孤低、てことか。キツいなあ。 『「孤族」は自由社会のツケか?』 http://bit.ly/hChBtp #utamaru
posted at 19:40:11


【KOKOU】しかし、段々宇多丸師匠の態度が、「THE欺瞞」の時のように、煽っておいてドン引き気味になってきてるのがちょっと心配。あと女孤高戦士「女狼」の投稿に対しては途端に気まずい空気でいっぱいになる童貞力はハンパない。 #utamaru
posted at 19:40:37


【KOKOU】思えば「花より男子」論争、「フード理論」福田里香の回、そして女狼と、女性が絡むと宇多丸師匠のアワアワ感がすごい。もちろんこれは批難ではないけれど。とは言えその男汁感にたまに乗れない。最近流行りの世代の問題・・・ってことにしておこう #utamaru
posted at 19:44:30


【KOKOU】「鍋は唾液が入ってヤダ!同棲なんて一年したってわからない!」と口角泡を飛ばして熱弁する宇多丸師匠に「個室化が進んだせいで~、ノイズ耐性がない、ヘタレな若者が増えたわけですよ~(かなりヤな感じで)」と罵ってる宮台真司先生の画像下さい #utamaru
posted at 19:49:05



と、まったく言い訳できないツイートを連発しているから、けっこう深刻に受け止めざるを得ない!!
だって『余計なお世話だバカヤロウ』の歌詞はこんなだよ…。

バカヤロウと言やぁ最近の野次馬 妙に偉そうな空気が充満
一銭たりとも払わず気分だけは一家言持ったコンシューマー (宇多丸)


「いるよねー、そういうヤツ」その「そういうヤツ」
自分とは気付かずそう言うヤツ
お前だよバカヤロウ!!!(Mummy-D)


↑こんなステキな歌詞の数々が俺のマヌケ面にクリティカルヒット!!いるよねーwwぐぬぬ。
いや俺はちゃんと金払ってるぜハゲ!とか言い返したいけど、しかし、

「バカヤロウ、とか言っちゃってダイジョブすかねー
 ボクはいいんだけどウエがどうすかねー」
どうすかねじゃねぇだろ バカヤロウも言えない世界にしたいかバカヤロウ(宇多丸)


なんてところは、自分も以前、

「こんな放送をして、世の中のおっさんおばさんから苦情メールが来ちゃうだろうなあ」
「放送局の偉い人とかスポンサーとかが怒るだろうなあ」
というのが、自分がまず第一に考えてしまうことだということに、最近気付いて結構ガックリきた。

「『キラ☆キラ』一周年に思う」
http://shikahan.blog78.fc2.com/blog-entry-33.html


とか書いてしまっているので…もう泣きたい。
フルボッコすぎてオレがメンタル裂け気味の人だったら、

「宇多丸が神保町から怪電波を発して俺を殺そうとしている!!」

とか言い出すくらいのレベル。
しかも泣いて謝ったところで、

『ほとんどビョーキ』
情緒不安定になるフライデー 見るもの触れるもの全部不快で
呪いのコトバ連ねたブログ書いて 後で読み返して思う ボク最低!(宇多丸)


と、こっちにも宇多丸が待ち構えている!
逃げ場がない!!




…まあそれでも佐々木俊尚氏の「キュレーター」やマルコム・グラッドウェルの「メイブン」か「セールスマン」あたりの言葉を自分に都合よく使ってこのまま書き続けよう。アフィリをしてないからわからないけど、このブログを見てRHYMESTERのCDを買ったりタマフルを聴き始めた人も一人ぐらいはいるかも知れないから。


キュレーションの時代 「つながり」の情報革命が始まる (ちくま新書)キュレーションの時代 「つながり」の情報革命が始まる (ちくま新書)
(2011/02/09)
佐々木 俊尚

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(2007/06/23)
マルコム・グラッドウェル

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それにどうせ「宇多丸は自分は批判してるくせに批判されると切れる」とか「スルースキル低すぎワロスwww」と曲解・誤解するバカヤロウが現れるだろうし、批判すること自体は批判されてるわけじゃない、と思って、頑張ってみる。

本当は「ハートロッカーを巡る論争に思う」で書いたような、

・明確なメッセージを本人は受け取っているのに、それをどう感じるかより「わかりにくい」という技術論で語るのは、悪い意味での「評論家の意見」であって、ラッパーであり表現者である宇多丸くんにとっては逃げだ。

という論旨じゃないかと。


つまり、町山さんにしては結構気を遣っていて、厳しい言葉はなかったが、
「ガチで映画の技術論や批評を宇多丸くんがしても無意味だし限界がある」
こと、しかし
「そうじゃない価値こそシネマハスラーにはある」
ということを言いたかったのでは。


という見立てに対する、宇多丸師匠のクリエイターとしての最高のアンサー!と言って楽しみたいところだ。
でもこの歌を「町山さんVS宇多丸師匠」の構図や2ちゃんを始めとするネット界隈批判としてだけで見るのは、マキタスポーツのネタを「モロ○○じゃんwww」とつまらない揶揄や煽りや憂さ晴らしに回収するのと同じだ。きっともっと普遍的な解釈をした方がいい。

単に揶揄ってるだけじゃ駄目なんだよ。
創造のための破壊なんだよ。
非生産的メタ語りや批評家ごっこの無限後退を断ち切って一歩前に進むための歌なんだよ。
俺は引き受ける覚悟を持ってるよ。
お前はどうなんだよ!
お前はどう思ったんだよ!
お前はどう行動するんだよ!

くそー!!!
俺はクリエイターでもないし才能もないから「作品を作る」ことでは返せない。ケチな揶揄や批判、ネタ化もこれからもするだろう。
でも、日常のひとつひとつの行動や会話、例えば仕事とか、人と接する態度とか、子育てとか、投票とか、善行とか、寄付とか、よくわからないけどそういうことで返していくよバカヤロウ!!

「Just Do It!」
おれは為すぜ 為すぜ 成して 成して
成し遂げるぜ、何かをな。 (Mummy-D)
 



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テーマ : Japanese R&B/HIP HOP    ジャンル : 音楽

ゲームのアトラクション化の可能性

Category: その他レビュー   Tagged: ポッドキャスト  ゲーム  映画  
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 「映画のアトラクション化」というエントリーを以前に書いたのだが書き足りなかったことを少々。

 前回は映画とゲームの比較と進化について、軸足を映画側に置いてみたので現在のゲーム業界の主流からは正直ズレてしまっている。

 要するに、今後はwiiやDSなどの新しいインターフェイスを使ったゲームや、携帯ゲームやiPhoneアプリなどの手軽さとモバイル性、そしてソーシャル性を活かしたゲームが中心になっていく、というかとっくになってしまっている状況だ。
 コアなファンほど正論と正義感と使命感をもって抗したい気持ちになるものだが、よりシンプルに、よりテキトウに、よりワイワイやる方向に進む。
ゲームに限らず文化の成長、成熟、衰退とはそういう過程を経るものなんだろう。
 
 だから「”よりアトラクション化する映画”としてのゲーム!」なんつう議論は時代遅れの価値観を前提としているのであって、最早誰もゲームにそんなことなど期待してねえよとか、メンドクセーって話なのかもしれない。
まあ正直オレもそーだわ。
 
 じゃその流れは今後どう展開するかって話になるが、例えばセカイカメラみたいに、現実にゲーム要素を持ち込んで、その際に最新のツールが有効に活用される、みたいなものは確かに楽しいんじゃないかな、とベタながら一応は思う。
 それが所謂ARと呼ばれるようなものと括っていいのかわからないが、現実は高度に作り込まれた無限の容量を持った箱庭なんだから、その世界観を活かさないのはもったいないかもな。

*************************************

 ※この辺の話は、敬愛する「アキバ系!電脳空間カウボーイズ」でケイス淀橋(清水亮)さんらが語っている内容が非常に示唆に富んでいて面白い。
  後編に収録されている「Like a Turing Machine」も最高。

 「第三百十回 Alternate reality gameの世界 前編
 「第三百十一回 Alternate reality gameの世界 後編

 RPGはファンタジーでなければならない説、ゲームデザインにおけるジレンマの外在化、Alternative RealityとAugmented Realityの違い、伝説のTRPG「トラベラー」について、ドラクエⅠ製作時の堀井雄二の悩みなど聞き所満載だけど、やはり「クリムゾンフォックス」の話は面白い。
 ただ、ケイス淀橋さん自身も行っている通り、このままじゃまだあんまり楽しくない、ていうのもわかる。
 話を聞く分には楽しそうだね、とは思うけど、実際に金を出して出かけて参加するほどの動機がないのかな…?
 広告屋が主導するキャンペーンや広告などの「イベント」ではなく、純粋にゲームとしてどれだけ面白いものに発展出来るのかって部分は、部外者の自分にとっては酒のネタで一晩友達と話し合うのに格好のネタかも知れないな。

「クリムゾンフォックス 渋谷の街に隠された暗号を追え」
http://onosendai.jp/crimsonfox/
「マチ★アソビ」
http://www.machiasobi.com/
「ニューヨークのどこかに1万ドル入り宝箱、サイトでヒントを順次公開(ナリナリドットコム)」
http://www.narinari.com/Nd/20100814007.html
「路上ミステリー:ニューヨークウェーブ(NHK)」
http://pid.nhk.or.jp/pid04/ProgramIntro/Show.do?pkey=101-20101023-11-05473

 そう言えば、たしか94年頃だったと思うが、リアル宝探しの謎本のようなものが出版されて一時話題になった記憶がある。
 見開きでズラッと日本人形だけが並んでいてワケワカラン、みたいな奴だったが、あれは一体なんだったのかな。
 グーグル先生はきっと知ってるハズなんだが、どう質問(検索)すればいいのやら…。
 その後、お宝はポートピアに埋めてあって、阪神大震災で回収不可能になりゲームが終了した、という噂を聞いたのだが、今考えてみればいかにもな都市伝説っぽいので、恐らくガセだったんじゃないだろうか。

 ついでに思い出したが、幼少時だから70年代後半になるが、家に洋書の絵本があり、イラストを縁取るアルファベットに何か謎が隠されている、という話を姉に聞いて必死で考えたが、これも謎のままだ。
   →「Masquerade」というイギリスの絵本だということが判明
   Wiki「仮面舞踏会(絵本)Masquerade
   各ページの解答(英語)イラストあり
   こういう本を「アームチェア・トレジャー・ハンツ」と呼ぶことも知った。



 さらにググッたらこんなのも出てきた。

 「君は「宝探し本」を覚えているか?」
 
 こういう試みが繰り返しなされ、そして今ひとつ定着しない状況を鑑みると、ARGにはやはり技術的なブレイクスルーを応用して新しい価値観の創出とか、ある種の異化作用は必須なのかなということと、もしくは経済的、倫理的なブレイクスルーによって新たな体験(例えばクレーン車で高級車をぶっ壊すとか、福本先生的なゲームをリアルにリスクを背負ってやるとか)を産み出す必要があるのかも知れないな。あとは単純に賞金1億とか。

いずれにしろ、最新or応用技術とツールが加わることによって、突如古いアイデアが活性化し、見慣れた光景が一挙に新しい地平に書き換えられる瞬間に立会うのは心がワクワクする。
 携帯の登場で、友達や家族とのコミニュケーションが大幅に変化したり、ミステリーのシナリオに作家が必ず言い訳を入れなくてはならなくなった時のように。
 TwitterやUstreamの登場で既存メディアの構造が大きく変革を迫られている今現在のように。

*************************************

 話は戻って、来た上で変わって。

 個人の可処分時間が減り続ける中、ゲームのプライオリティをどの程度高められるかというのはメーカーに取って大きな課題なのだろうけれど、それがうまく行き過ぎても、例えば「ネトゲは人間性を求める行為(普通の感謝とか協力とかによる承認欲求など)を取り入れたからこそ廃人を産み出すまでになった」みたいな議論もある(「ねとすたシリアス」内での濱野智史氏の発言)し、程度の問題だがそれが非生産的なものに過ぎないなら、現実への過度の侵食は、好き嫌いの問題とは別に社会的な問題を産んでしまうだろうし…。

 人間性の搾取と言えば、例えばMAD職人の皆様は一銭にもならないのに神とか乙とか言われるためだけに多大な時間と労力を費やし、場合によっては違法行為までしているのだから、実はニコ動というネトゲの廃人だと言えなくもない(必ずしも非生産的なわけではないが)。
 つかそれ言ったらそもそも人生は恋愛だって仕事だってなんでもゲームに見立てることは可能だし、そういう言説はポピュラーじゃんか。
 んで終いには「役を演じていると思ってポジティブシンキングで詐欺営業!」とか逆に「あれ?これもしかしてクソゲー?管理社会が俺に見させている夢?」とか言い出すお決まりのアレな感じに。

 正直、今お前がやりたいゲームはなんだと聞かれても、俺は自分のクソゲー人生においてドラキーだけで1000,000G貯めなきゃみたいな苦行に汲々としているから物理的に無理だ。
 ゲームの方向性についての善し悪しの判断はそれぞれあるだろうが、「田舎暮らしとアーバンライフのどっちがいいか」という議論と一緒で、いずれにしろリアルに金は稼がなきゃならん、という身も蓋もない前提からは逃れられないわけだし。
ギートステイトみたいな思考実験もあるけれどもちろんリアルにやるわけにはいかないし。

 やっぱ旧来型のゲームに良い未来はない気がしてきた。まあオレが歳とったってのもあるが。あんなにゲームを愛していたのに気がつけばまったくやってないし。
 間違いなく生産的だと言えるのは、愚民どもにゲームを遊ばせて搾取してやろうガハハみたいなことしか思い浮かばないなあ。
 となると、今後どういうゲームが…(振り出しに戻る)

シリアスゲーム―教育・社会に役立つデジタルゲームシリアスゲーム―教育・社会に役立つデジタルゲーム
(2007/02)
藤本 徹

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関連エントリ:「ジブリ創作のヒミツ」とキツ過ぎる葛藤400日

【追記:2011.6.15】
現実とフィクションの境界を消していく――八重尾昌輝氏に聞くARG(代替現実ゲーム)の今と未来
http://b.hatena.ne.jp/articles/201102/2224
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ライムスター「マニフェスト」がイカ酢

Category: その他レビュー   Tagged: 宇多丸  音楽  
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レビューとしてはだいぶ出遅れ気味になってしまったが、ライムスターの新譜「マニフェスト」がイカ酢。

マニフェスト(初回限定盤)(DVD付)マニフェスト(初回限定盤)(DVD付)
(2010/02/03)
RHYMESTERDABO

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(※さほどヒップホップなどに詳しくない立場で書いているため、シーンの歴史や専門知識やらで誤解があるかも知れません。ただし、このアルバムは従来ヒップホップなどをあまり聴かない人間に届いたこと自体に価値があると思うので、間違った形であれ「到着証明」として書かせて頂きます。明らかな間違いがあればご指摘下さい。また、今回はライムスター=ほぼ宇多丸として書いています。)


自分は三十代で、十代後半の頃にはヒップホップはそれなりに人気があったので「なんか面白そうなことやってるな~」と思って軽くチェックを続ける反面、所謂「チェケラッチョ!でしょ」的な誤解もマンマンで、正直何をどう理解していいのかわからないまま、脳内ロッカーの未解決事件ファイル入りして十数年が経ってしまった、という感じだった。

で、たまたまシネマハスラーをきっかけにタマフルの存在を知り、宇多丸師匠の話に少しずつ感化され、改めて旧譜を聴き直し、そして今回の「マニフェスト」発売、と、もう完全に
集中セミナー後に壺買わされて絶賛 みたいな状態になった、と。
そりゃこれだけ毎週師匠の話を聞いてりゃ、ねえ。

それは冗談としても、今までDISとか「キング・オブ・ステージ」とかネタかベタかわからん級の初歩レベルから一歩脱して、その歴史的な流れとか形式とか文法とかかおぼろげながらもわかってきたし、何より、表現形態として素晴らしく魅力的なのだなということは強烈にわかるようになった。要するに、

すげー格好良くて羨ましい!俺もやりてえ!(ついでにモテたい!)

そう素人の俺に思わせてくれるだけの魅力がこのアルバムにはあった。

そもそも他ジャンルの日本語曲よりも圧倒的に歌詞の量、つまり情報量が多いわけで歌詞カードをただ読んでいるだけで抜群に面白い。大多数のJ-POPの詩を読んだところで、変なラブポエムが書いてあるだけだから、三十過ぎたオッサンが共感したり感動したりする訳がない。

それに加えて強いメッセージ性(各論の賛否はともかく)と巧妙なライミングテクニックとくれば、そこに多くの人を引き込む魅力があるのは当然なんだろう。


****************************************

余談だが自分は中学生時代、カルチャークラブ『カラー・バイ・ナンバーズ』ジャケのBJに惚れて買ってしまうと言う、志村うしろ級にベタなトラップに引っ掛かってしまって以来、思春期をほとんど洋楽しか聴かないで過ごしてしまった。

↓今見ると結構微妙なジョージさん。いや、DTだったオレには可愛い女の子に見えたんだよ…。

カラー・バイ・ナンバーズ(紙ジャケット仕様)カラー・バイ・ナンバーズ(紙ジャケット仕様)
(2008/06/25)
カルチャー・クラブ

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その後90年代後半からは邦楽も聴くようになり、平凡な音楽遍歴を重ねてきたわけだが、基本的には音楽を技術論として語るだけの知識がないため、必然的に歌詞を重視するしかなかったわけだ。スーパーカーとかくるりとかナンバガとか。そして堂々巡りの実存的問題に悩みつつ何もやらねえ、みたいな。
おそらくそういう人は同世代には結構いるだろうが、自分にとっても当時はそれなりに切実な問題であったのだ。

その後就職し、結婚式を挙げる際に挙式で流す音楽をワクワクしながら選曲しようと思ったら

ハレの日に流せる曲を全然持ってねえ!

という事実に結構愕然とした。
そしてそれ以後、そんな自分を子どもだと思うことにした。いろいろと大変な状態にあった中での結婚だったので、せめて幼稚な自意識や感傷で、嫁さんに迷惑を掛けるようなことはやめようと、大人になるためのイニシエーションをしたつもりだったのだ。大人になるって嫌だねえ?いや、俺は最高だと思うよ。

****************************************

さて、宇多丸師匠は以前「ヒップホップは従来表現する言葉を持たなかったストリートの若者が自己表現をする強力な武器になった」的なことを言っていて、それはまさしくそうなのだろう。
しかしそれは師匠なりの大局を見た歴史的意味付け的な面もあって、現在の結果だけしか知らない自分のような人間からすれば、もはやストレートに「高度に知的で効果的な、最高の表現手段の一つ」と言い切って良いんじゃないかとすら思う(…と言うと、いとうせいこうとか近田春夫とかが思い出されて気が引ける面もやはりあるが。個人的な不満としては、ヒップホップをストリート的感性の発露の場としたせいでまったく俺には届かなかった、ということかも知れない。別に俺はエリートじゃないけど、まさかストリートを気取れないし、悪そうな奴はだいたい友達でもないからね)

絶妙に配置されたライムは聴いていて、或いは口ずさんでこの上ない快楽とインパクトを残すし、しかもそういった制約を課した中で的確に自分の伝えたいメッセージを、シニカルに、情熱的に、お下劣に、自虐的に、アイロニーやユーモア満載に、その他諸々の形容を自由に与えた言葉を紡いでいく、という技術と魂に圧倒されずにいられない。

「H.E.E.L」(宇多丸)
オレだってキレそう ほんとイヤな世相 なんでああ無節操 ワイドショーは消そう
やたらと血相変え吊し上げ そう 「地獄への道は善意で舗装」


の部分は、仮にライムという制約がなくてもこの内容をこれ以上的確に表現出来る歌詞はない、とすら思えるし

「渋谷放浪記」(宇多丸)
超アウェイがついにホームと化した あのツレない街を振り向かした

「Come On!!!!!!!」(宇多丸)
元は弱小も弱小 下の下の下郎からスタート 手持ちのカードはゼロ
ガキの貯金的なプライドは捨てろ テメエの真価 全部吐き出すテロ



などには、宇多丸という人のこれまでの歴史と人生観が凝縮されていて心に響く。

また先に集中セミナー後に壺買わされて、と言ったけど、これは冗談なくて結構大事で、映画を見る際に原作本を読んで漫画版を読んで解説書を数冊を読んで、と予習復習をすると、まったく理解の深さが違ってくるので、普段宇多さんの話を聞いている、ということで自然と歌詞の意味がわかる、ということもあった。
例えば「付和Ride On」の歌詞はクソ真面目な顔をすればいくらでも批判できる内容だけど、彼が高野陽太郎『「集団主義」という錯覚』を読んでいると知っていれば、これは単なる馬鹿騒ぎだけじゃなくて、シニカルな意味も含めている、ということがわかる。そしてこういう音楽体験をリアルタイムでするのはいいな、と思った。

「集団主義」という錯覚―日本人論の思い違いとその由来「集団主義」という錯覚―日本人論の思い違いとその由来
(2008/06/25)
高野 陽太郎

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※Mummy-Dについては、例えば「K.U.F.U」で、師匠が一通り「工夫」をなめたらあかんぜよとぶったあと、逆境的状況から苦悩しつつ知恵や努力によって何かを実現する体験を自分史として語る部分などは本当に素晴らしくて、杜甫とか白居易とかそういうレベル(古い価値観にすがって権威化しようとか、漢詩もラップも韻踏んでんじゃん的なことではなく、両者の境遇、人生観、社会観に共通するものがある、という意味です)。だけどここでは宇多さん中心なので割愛します。


ただ、先に「羨ましい」と書いたけれど、それもやはり今だからこそ言えることで、彼らは黎明期からどうやって日本語でヒップホップをやるか(そもそもそんなことやる意味あるのか)、という問題と暗闇の中で格闘し続け、そして自ら道を切り開いてここに至っているのだから真にエポックメイキングな存在なのだろう(もちろんそれに携わってきたのはライムスターだけじゃないが)。

「宇多丸は早稲田卒のインテリだし、医者の子だからそれなりに裕福だろ」みたいな、「どっちがモテないか競争」的な不毛な批判もあるだろうけど、現実問題として同期がバブルの時期に大手企業に就職、出世していく中で

士郎ちゃん、エアガン持ってどこ行くの?夕ごはウッセーババー!!!!

みたいな(いや知らんけど)深い闇は、またストリート的、階級闘争的な意味とは違うざわ…ざわ…しそうな切実な問題として強烈に存在しただろうし。

それが気付けば、現在の言論一般に関する立場が、政治家、学者から評論家、社会活動家、コラムニストやエッセイスト、そして自分のような泡沫ブロガーに到るまで様々ある中で、

「ラッパー&ラジオパーソナリティ」って…なんかズルくね?

とすら思わせるような環境や価値観を、自らの手で創造していったことにこそ、ライムスター、そして宇多丸という人の真価があるのではないだろうか。まあどんな世界にいても、辛い状況下でも諦めずに努力してきた人間はえらい、ということだ。まさにONCE AGAIN。


****************************************

もうひとつ別の見方で。
社会とヒップホップを併せて俯瞰した場合、かつてのヒップホップは日本語でヒップホップをやるという事自体がテーマになっていたり、極個人的なメッセージやシーンの中でのやりとりが中心的で、社会的なメッセージを含む曲にはあまり関心や共感を得られない(社会運動自体がそうであったように)状況だったのが、ライムスターがある程度のボリュームを持った層に代弁者として受け止められる社会的な背景(格差であったりマスメディア問題であったり)が出来上がった、とも言えるかもしれない。
まあ単純にヒップホップを抵抗なく聴ける人口が増えてもいるだろうし、「何を代弁しているか」となるといろいろ面倒くさい話になりそうだが。



【追記:2013.2.28】


文化系のためのヒップホップ入門 (いりぐちアルテス002)文化系のためのヒップホップ入門 (いりぐちアルテス002)
(2011/10/07)
長谷川町蔵、大和田俊之 他

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この文章は「ヒップホップってなんだかわかんなかったけどそんな初心者にもグッと来たよ」という内容だったわけですが、まさにそういう人の疑問を解決する入門書が登場しましたので、リンクを貼らせて頂きます。

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