しかし反撃もここまで

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ライムスター「マニフェスト」がイカ酢

Category: その他レビュー   Tagged: 宇多丸  音楽  
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レビューとしてはだいぶ出遅れ気味になってしまったが、ライムスターの新譜「マニフェスト」がイカ酢。

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(※さほどヒップホップなどに詳しくない立場で書いているため、シーンの歴史や専門知識やらで誤解があるかも知れません。ただし、このアルバムは従来ヒップホップなどをあまり聴かない人間に届いたこと自体に価値があると思うので、間違った形であれ「到着証明」として書かせて頂きます。明らかな間違いがあればご指摘下さい。また、今回はライムスター=ほぼ宇多丸として書いています。)


自分は三十代で、十代後半の頃にはヒップホップはそれなりに人気があったので「なんか面白そうなことやってるな~」と思って軽くチェックを続ける反面、所謂「チェケラッチョ!でしょ」的な誤解もマンマンで、正直何をどう理解していいのかわからないまま、脳内ロッカーの未解決事件ファイル入りして十数年が経ってしまった、という感じだった。

で、たまたまシネマハスラーをきっかけにタマフルの存在を知り、宇多丸師匠の話に少しずつ感化され、改めて旧譜を聴き直し、そして今回の「マニフェスト」発売、と、もう完全に
集中セミナー後に壺買わされて絶賛 みたいな状態になった、と。
そりゃこれだけ毎週師匠の話を聞いてりゃ、ねえ。

それは冗談としても、今までDISとか「キング・オブ・ステージ」とかネタかベタかわからん級の初歩レベルから一歩脱して、その歴史的な流れとか形式とか文法とかかおぼろげながらもわかってきたし、何より、表現形態として素晴らしく魅力的なのだなということは強烈にわかるようになった。要するに、

すげー格好良くて羨ましい!俺もやりてえ!(ついでにモテたい!)

そう素人の俺に思わせてくれるだけの魅力がこのアルバムにはあった。

そもそも他ジャンルの日本語曲よりも圧倒的に歌詞の量、つまり情報量が多いわけで歌詞カードをただ読んでいるだけで抜群に面白い。大多数のJ-POPの詩を読んだところで、変なラブポエムが書いてあるだけだから、三十過ぎたオッサンが共感したり感動したりする訳がない。

それに加えて強いメッセージ性(各論の賛否はともかく)と巧妙なライミングテクニックとくれば、そこに多くの人を引き込む魅力があるのは当然なんだろう。


****************************************

余談だが自分は中学生時代、カルチャークラブ『カラー・バイ・ナンバーズ』ジャケのBJに惚れて買ってしまうと言う、志村うしろ級にベタなトラップに引っ掛かってしまって以来、思春期をほとんど洋楽しか聴かないで過ごしてしまった。

↓今見ると結構微妙なジョージさん。いや、DTだったオレには可愛い女の子に見えたんだよ…。

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その後90年代後半からは邦楽も聴くようになり、平凡な音楽遍歴を重ねてきたわけだが、基本的には音楽を技術論として語るだけの知識がないため、必然的に歌詞を重視するしかなかったわけだ。スーパーカーとかくるりとかナンバガとか。そして堂々巡りの実存的問題に悩みつつ何もやらねえ、みたいな。
おそらくそういう人は同世代には結構いるだろうが、自分にとっても当時はそれなりに切実な問題であったのだ。

その後就職し、結婚式を挙げる際に挙式で流す音楽をワクワクしながら選曲しようと思ったら

ハレの日に流せる曲を全然持ってねえ!

という事実に結構愕然とした。
そしてそれ以後、そんな自分を子どもだと思うことにした。いろいろと大変な状態にあった中での結婚だったので、せめて幼稚な自意識や感傷で、嫁さんに迷惑を掛けるようなことはやめようと、大人になるためのイニシエーションをしたつもりだったのだ。大人になるって嫌だねえ?いや、俺は最高だと思うよ。

****************************************

さて、宇多丸師匠は以前「ヒップホップは従来表現する言葉を持たなかったストリートの若者が自己表現をする強力な武器になった」的なことを言っていて、それはまさしくそうなのだろう。
しかしそれは師匠なりの大局を見た歴史的意味付け的な面もあって、現在の結果だけしか知らない自分のような人間からすれば、もはやストレートに「高度に知的で効果的な、最高の表現手段の一つ」と言い切って良いんじゃないかとすら思う(…と言うと、いとうせいこうとか近田春夫とかが思い出されて気が引ける面もやはりあるが。個人的な不満としては、ヒップホップをストリート的感性の発露の場としたせいでまったく俺には届かなかった、ということかも知れない。別に俺はエリートじゃないけど、まさかストリートを気取れないし、悪そうな奴はだいたい友達でもないからね)

絶妙に配置されたライムは聴いていて、或いは口ずさんでこの上ない快楽とインパクトを残すし、しかもそういった制約を課した中で的確に自分の伝えたいメッセージを、シニカルに、情熱的に、お下劣に、自虐的に、アイロニーやユーモア満載に、その他諸々の形容を自由に与えた言葉を紡いでいく、という技術と魂に圧倒されずにいられない。

「H.E.E.L」(宇多丸)
オレだってキレそう ほんとイヤな世相 なんでああ無節操 ワイドショーは消そう
やたらと血相変え吊し上げ そう 「地獄への道は善意で舗装」


の部分は、仮にライムという制約がなくてもこの内容をこれ以上的確に表現出来る歌詞はない、とすら思えるし

「渋谷放浪記」(宇多丸)
超アウェイがついにホームと化した あのツレない街を振り向かした

「Come On!!!!!!!」(宇多丸)
元は弱小も弱小 下の下の下郎からスタート 手持ちのカードはゼロ
ガキの貯金的なプライドは捨てろ テメエの真価 全部吐き出すテロ



などには、宇多丸という人のこれまでの歴史と人生観が凝縮されていて心に響く。

また先に集中セミナー後に壺買わされて、と言ったけど、これは冗談なくて結構大事で、映画を見る際に原作本を読んで漫画版を読んで解説書を数冊を読んで、と予習復習をすると、まったく理解の深さが違ってくるので、普段宇多さんの話を聞いている、ということで自然と歌詞の意味がわかる、ということもあった。
例えば「付和Ride On」の歌詞はクソ真面目な顔をすればいくらでも批判できる内容だけど、彼が高野陽太郎『「集団主義」という錯覚』を読んでいると知っていれば、これは単なる馬鹿騒ぎだけじゃなくて、シニカルな意味も含めている、ということがわかる。そしてこういう音楽体験をリアルタイムでするのはいいな、と思った。

「集団主義」という錯覚―日本人論の思い違いとその由来「集団主義」という錯覚―日本人論の思い違いとその由来
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※Mummy-Dについては、例えば「K.U.F.U」で、師匠が一通り「工夫」をなめたらあかんぜよとぶったあと、逆境的状況から苦悩しつつ知恵や努力によって何かを実現する体験を自分史として語る部分などは本当に素晴らしくて、杜甫とか白居易とかそういうレベル(古い価値観にすがって権威化しようとか、漢詩もラップも韻踏んでんじゃん的なことではなく、両者の境遇、人生観、社会観に共通するものがある、という意味です)。だけどここでは宇多さん中心なので割愛します。


ただ、先に「羨ましい」と書いたけれど、それもやはり今だからこそ言えることで、彼らは黎明期からどうやって日本語でヒップホップをやるか(そもそもそんなことやる意味あるのか)、という問題と暗闇の中で格闘し続け、そして自ら道を切り開いてここに至っているのだから真にエポックメイキングな存在なのだろう(もちろんそれに携わってきたのはライムスターだけじゃないが)。

「宇多丸は早稲田卒のインテリだし、医者の子だからそれなりに裕福だろ」みたいな、「どっちがモテないか競争」的な不毛な批判もあるだろうけど、現実問題として同期がバブルの時期に大手企業に就職、出世していく中で

士郎ちゃん、エアガン持ってどこ行くの?夕ごはウッセーババー!!!!

みたいな(いや知らんけど)深い闇は、またストリート的、階級闘争的な意味とは違うざわ…ざわ…しそうな切実な問題として強烈に存在しただろうし。

それが気付けば、現在の言論一般に関する立場が、政治家、学者から評論家、社会活動家、コラムニストやエッセイスト、そして自分のような泡沫ブロガーに到るまで様々ある中で、

「ラッパー&ラジオパーソナリティ」って…なんかズルくね?

とすら思わせるような環境や価値観を、自らの手で創造していったことにこそ、ライムスター、そして宇多丸という人の真価があるのではないだろうか。まあどんな世界にいても、辛い状況下でも諦めずに努力してきた人間はえらい、ということだ。まさにONCE AGAIN。


****************************************

もうひとつ別の見方で。
社会とヒップホップを併せて俯瞰した場合、かつてのヒップホップは日本語でヒップホップをやるという事自体がテーマになっていたり、極個人的なメッセージやシーンの中でのやりとりが中心的で、社会的なメッセージを含む曲にはあまり関心や共感を得られない(社会運動自体がそうであったように)状況だったのが、ライムスターがある程度のボリュームを持った層に代弁者として受け止められる社会的な背景(格差であったりマスメディア問題であったり)が出来上がった、とも言えるかもしれない。
まあ単純にヒップホップを抵抗なく聴ける人口が増えてもいるだろうし、「何を代弁しているか」となるといろいろ面倒くさい話になりそうだが。



【追記:2013.2.28】


文化系のためのヒップホップ入門 (いりぐちアルテス002)文化系のためのヒップホップ入門 (いりぐちアルテス002)
(2011/10/07)
長谷川町蔵、大和田俊之 他

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この文章は「ヒップホップってなんだかわかんなかったけどそんな初心者にもグッと来たよ」という内容だったわけですが、まさにそういう人の疑問を解決する入門書が登場しましたので、リンクを貼らせて頂きます。

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