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しかし反撃もここまで

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「ジブリ創作のヒミツ」とキツすぎる葛藤400日

Category: テレビ・ラジオ  
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録画しておいた「ジブリ 創作のヒミツ 宮崎駿と新人監督 葛藤の400日」(NHK)を見た。

借りぐらしのアリエッティは蟻をバカにしすぎ」というエントリでは思いがけず彼我のクリエイティブ論の比較に話が及んでしまったが、それは案外いいとこ突いてたんじゃないか、とこの番組を見て思った。

というのは、ジブリの「創作のヒミツ」が、良くも悪くもあまりに旧態依然としたやり方だったことに結構愕然としたからだ。
チームラボの猪子寿之社長が以前雑誌で「ipodを生み出せなかったことから目を背け、ipodのヒットを影で支える日本の鏡面研磨技術はスゲエ、日本の職人的ものづくり魂健在!とか言ってる奴はオメデタすぎる」的なことを言っていたが、まあ似たような話かもしれない。

もちろん現代のビジネスマン感覚とかマネジメント論とはかけ離れた非効率で属人的なやり方だ、と批難しても、芸術家の作品として、あるいは職人集団としては合理的だったり不可欠な選択だったりする面もあるだろうし、後継者や職人の人間的成長という意味では、有効に機能することも多いだろう。
何が本当にブラックなのか?」というエントリで触れたように、職場や製作環境の良し悪しを簡単に判断することは難しいだろうし、安易に全否定する気はもちろんない。

しかし、あの環境(大バジェット、大看板、周囲はカリスママンセー)で新人監督ひとりに責任を負わせる、というのはあまりに、あまりに酷だ。
仮に今回はうまく行ったとしても、強烈なカリスマ指導者の後継者育成、というのはこういうやり方が正しいのだろうか。歴史に学べば違和感がある。
米林監督が宮崎駿に相談していない、と知った時の、女性アニメーター?の不信感を伴ったあの眼。あれは米林監督にとって、本作が成功するしないに関わらず、きっと一生忘れられないものになるだろう。

それは必ずしも彼女が悪いわけじゃなくて、そういう環境を作った先代に帰すべき責任じゃないだろうか。
宮崎駿の後を受けてジブリの看板を背負う、なんてことは、(能力や作品そのものの評価とは別に)誰がどうやったってとてもうまくいく気がしないくらい、高すぎるハードルじゃないか。

それに、アニメーターは所詮アニメーターでしかない。
馬鹿にする意味では決してなく、演出家も俳優も物理学者も料理人も、みな基本的に自分の専門分野以外は素人だ。
だからこそ、ひとりのアニメーターの天才的作画や演出力に期待する(もしくは責任を押し付ける)のではなく、優秀なスタッフと協力し、偉大な先達の助言を仰ぎ、さらには多様な分野の専門家の知識を集め、協働作業の良さをもっと活かせればいいのにな、とちょっともったいなく思う。
もちろん多少なりともそういうことはしているだろうし、それに必ずしも協働・集合知的なものが常に正しいとは限らないけれど、しなくて良い苦労を個人に負わせているようで気の毒でならない。
きっとジブリには職人として優秀な人はたくさんいるのだろうし、外部の優秀な人間に協力を得られるだけの知名度と信頼もある。
天才がいることだってもちろん良いことだが、そういうことだってとても素晴らしい財産じゃないか。


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宮崎駿は、かつて近藤喜文監督に口を出しすぎて衝突した経験から、今回はまったく干渉しなかった、と言うが、なんという極論ブランコだろう。
なぜ「良きアドバイザーになる」という、生産的で合理的ですべてのスタッフにメリットしかない当然の選択肢を選ばなかったのだろうか。
まあそれは彼の哲学なんだろうし、外野が意見をすることではないが、もし自分が彼の部下だったと想像すると、ちょっと胃が痛くなってしまう。そして自分も上司として、そういうやり方をしようとは思わない。
いや、もしかしたらはやおっちは、この20年の間に後継者としてょぅι゛ょ若手女性を育てたかったのかも知れない。ナウシカみたいなしっかり者のカワイコちゃんを監督に抜擢!となれば、みんないろんな意味を含んだ深い「あ~」という嘆息を漏らして、すべてうまく行ったのにな。
それが出来なかった時点で、もう彼にとっては後継なんてすべてどうでも良いことなのかも知れない、とでも思おう。
まあ鈴木敏夫はともかく、そもそも宮崎駿自身にはジブリという組織、ブランドが永続的に売れ続けて欲しいという希望はないかも知れないし。

ついでに、これもあくまで個人的な好みなので他人に押し付けるつもりは毛頭ないけれど、アニメ映画に求めているものが何か、ということを考えると、ジブリが好きなはずなのに、最近の作品はあまり楽しめていない理由がわかった気がする。

たとえば外食するとき、店の雰囲気や新しい料理のアイデア、食べたことのない食材、大人も子供もそれぞれに楽しめる意外で面白いコースの組み合わせ、盛りつけの斬新さ、食感や香り、そして何より基本的なおいしさ求めている。
日本の最先端のお菓子とかジャンクとかも大好きだけど、一番のお気に入りはPという本社がアメリカにあるレストラン。聞くところによると、厨房には和洋中の料理人はもちろん、栄養士、色彩やデザインの専門家、文学者、心理学者、社会学者、マーケティングや広告の専門家もいるそうな。サービス満点なのでしょっちゅう家族を連れて行ってしまうが、親も子どももとても満足して帰ってくる。

一方「三鷹茶寮・治部里」は、その素敵な外観に誘われて中に入ると、出てくるのは案外普通の懐石。一応おいしいことは間違いない。
まだ有名になる前から通っているという近所のおばさん方は、有機野菜を使った自然食だから安心よね、と盛り上がり、その隣の食通ぶった常連は、盛りつける器や、米選び、水選びのレベルの高さを誉めそやす。後ろで腕組みしている先代に睨まれながら頑張る期待の二代目には「まだオヤジさんにはかなわないけど、なかなかやるねえ。ハッハッハ」とかなんとか、そんな感じ。
ん~、それが素晴らしい仕事で価値あることなのは間違いないし、十分尊敬されるべきことだけど、俺は今はそういうのはいいや。なんか飽きたわ。自慢の有機野菜も、正直うちの田舎で採れたものの方がうまいし。
娘もあんまり食が進まないようだ。店内に流れるBGMは大好きみたいだけどね。

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テーマ : 借りぐらしのアリエッティ    ジャンル : 映画

「借りぐらしのアリエッティ」は蟻をバカにしすぎ

Category: 映画  
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ari.jpg


盆休みで混雑するシネコンに行って、三十路の野郎ふたりで観て参りました。
本当は娘を連れて行きたかったんだけど、レイトショーだったので断念。
というわけで汚れちまった大人の感想は以下の通り。

【たのしかった点】

・耳すまっぽいブタ猫とかラストとか、ジムシーっぽいスピラーとか、王蟲っぽいダンゴムシとか、その他ジブリの過去作へのオマージュが満載で楽しい

・冒頭のシーン、アリエッティにとって初めての「借り」シーンでの、いつ人間に見つかるか、という緊張感(ある意味ここが興奮のクライマックス)

・アリエッティに会って、おそらく初めて同種の女の子を見たスピラーが弓をギンギンに怒張させるところ

・細かすぎて伝わらないハンダ付け

・音響
 初めて人間のキッチンを見たときにフラッシュバックする、くぐもった大音響の生活音は、床下から14年間聞き続け、そして想像し続けただろう家の中(人間世界)と、今ついに目の前にある光景を音だけで繋げた名シーン。

・ジブリはやっぱ鼻がサイコー
 90年代までの鼻表現(貞本義行みたいなくの字にクニッと曲がって影が付いてるやつ)が心底苦手だったので、ゼロ年代に入ってから次第に省略方向(けいおんとかほぼない)に進んで一応安心していたけれど、やっぱりちゃんと鼻の穴まで描いておきながら主張が少なく、美少女造形を維持できるジブリの鼻はサイコーかと。
 ※参考資料:WebLab.ota「最近のアニメのキャラデザと10年前のアニメのキャラデザ」
 http://d.hatena.ne.jp/n_euler666/20100110/1263142708

【いやんだった点】

・家政婦のハルがガッペムカつく。
 なぜあそこまで嫌なことをするのかがわからず、途中から登場するだけでイライラ。心臓病のぼっちゃまを監禁するリスクまで犯して家政婦がでしゃばるならしっかりした理由がないと困る。話を進める牽引力にもならない。動機の描写を10秒でも入れてくれたら、共感するなり敵役として反感を持つなり出来るのだが、よくわからないままただただ田舎の嫌なババア感だけは満載なので(食事の仕方も下品で、あんな人を貞子大叔母様が雇うわけない!)観ているのがつらい。

・アリエッティの母ホミリーがムカつく。
 痩せ魔女顔でバカで感情的でうるさい女を大竹しのぶが…耐えがてぇ。
 ハルVSホミリーは今世紀最大の底辺対決。

・翔の理解者であり庇護者であるはず?の貞子大叔母様も許せねえ。
 子供の前で両親の悪口言う感じがすごく嫌だ。

・登場する女性3人全員がこの有様なので、キラキラした初恋物語を演じているアリエッティも、将来そんな感じになるかと思うと激萎え。

・笑えるシーンがほとんどない。
 ハルのコミカルな動きも上記の理由で笑いに繋がらない…というか、今更こんなので客が笑うと思うなよ!

・もともとアリエッティの家は洒落ているので、精巧に作られたドールハウスのキッチンに変わっても、ビジュアル的にさほどインパクトがない。そもそも小人の世界では、当然スピラーのように「狩りぐらし」生活を送っている奴もいるのにアリエッティ一家はいくら「借りぐらし」とはいえあまりに文化的過ぎ。洋服はともかく、食器も発電機もベルトも、出来のいいものが揃い過ぎていて工夫して作った感が乏しい(※これは後述の蟻問題にも関わる)。

・俳優が声をあてるのはもうしょうがない…にしても、せめてエンドロールで紹介して欲しい。せっかく先入観を持たないように事前情報をシャットアウトしてるのに台なし。
 ただ、神木くんと志田未来は個人的には良かった。 
 
・今更ジブリにこんなこと言うのもなんだけど、思春期少女好きすぎ。
 洗濯物干して「わたし、こういうのだいすきなの!」と言わせる、女性に母性と少女性を同時に求める甘えんぼさんな感じは相変わらず。

【その他の点】

 ・砂糖を返しに窓からやってきたアリエッティと翔の会話、「姿を見たい」「だめ、お父さんに怒られちゃう」的な会話のやりとりがエロすぐる。完全に思春期中学生カップル。
 
 ・と考えると、身内の邪魔が入るという定番によって生殺しになった翔の書いた二枚目の手紙(一枚目は「わすれもの」)の文面(映画では明らかにされず)は「こんどこそ」もしくは一歩進んで「さきっちょだけ」だと推測される。
 
 ・翔とアリエッティの関係は「耳すま」の天沢&雫より、実は「花より男子」の道明寺とつくし的な関係と共通点多し。

 ・抑揚がない、高揚感がない、と批判する人も多いけど、小さな物語と思えばまあ…

 ・アクションの動きが遅い、という批判は、小さな生物にとって空気はかなり重い物質で粘度が高い、という科学的事実に拠っている…と思おう。

 ・ジブリにクソ真面目なテーマとか求めてケチつけたり、逆に変な深読みして得意げになるのはもうよそうよ。


とかいろいろあるんだけどさ…やっぱ一番思ったのは、

てめー蟻をバカにしてんのかよ!

ってことだ。

想像してごらん。
地上最強の生物とまで言われる蟻が巨大化して目の前にウヨウヨしてる世界を。
それ普通臨戦態勢でしょ。
てか臨戦どころか一気に『フェイズⅣ』だよ!


それを小娘アリエッティがホイホイと簡単に放り投げるとかマジありえない。お前の手首、いや首なんてひと噛みでブッチンだよ。だからアリエッティは蟻を見かけた瞬間、ジブリお得意の総毛立ち描写をしてダッシュで逃げる、というくらいじゃないと。
もし少しでもモタついたら、蟻さんはあっという間にお前を取り囲み、お気に入りのブーツから4,5匹よじ登って一瞬でバラバラにし、巣にお持ち帰りされるに決まってるね。それくらいヤバい相手。んで助けに来た翔に対して蟻さん代表が「いや狩ったんじゃないよ、借りただけだよ」と開き直り発言。
そこでようやく真のタイトル「狩りぐらしの蟻エッティ」ドーン!!


…と、ひと通りふざけて言ってみたけど、別に蟻エッティが言いたかったからじゃなくて、これ結構大事な話だ。こういう作品、つまり擬人化された動物とか物とか小人とかは、当然人間とはサイズや習性や構造が違うから、そこでどんなイマジネーションを提供できるか、というのが作り手にとって大きな見せ場、勝負どころになる。
「小人になるってこういうことか!」「小人だったら確かに世界はそう見えるかも!」とハッとするような想像力とか発見とか異化作用と呼ばれるようなものが優れている作品は、テーマなどとは別に、その表現だけで突出した、心に残る作品に成り得る。

たとえばジブリで言えば、『となりのトトロ』でめいちゃんを探してとお願いされたネコバスの行き先が「めい」に変わるこのシーン。
mei.jpg
アッと膝を打てるし、笑えるし、可愛いし、ほんのくすぐり程度のサイズだけど、とても良いシーンだと思う。

もちろんアリエッティでも、繰り返し登場するお茶を入れるシーンをはじめ、顔よりも大きなビスケットを砕いて粉にし、袋に貯める(おそらく他の料理に使う)シーン、釘やホチキスなどを足場に使うシーン、アリエッティの髪留めクリップ、マチ針の剣、部屋に飾られる紫蘇の大きな花など、「小人の世界」を体験させてくれる描写がたくさん出てきた。
特に水滴の表現は、米林監督がポニョで担当した例の海底大爆発シーンがあったからか、お茶に限らず水の粘度だけ異常に高い描写がてんこ盛りで、雨粒の滴り方とか、その雨粒が服に絡まったのを掴みとったりとか、よねっちの表面張力大好きっぷり(はやおっちは重力大好き)はすごく伝わった。


でも、正直言って、ほとんどグッと来なかった。
あ、そうか!とか、なるほど、それ面白いわ!とは、ちっとも思えなかった。
確かにひとつひとつは丁寧なプロの仕事ではあるけれど、ニコ動なら「その発想はあった」のタグを貼りつけたくなるシーンばかりだった。

内田樹が自身のブログの中で、水滴の表現のことを「面白い」、こういった想像力を「素晴らしい着眼点」と褒めているが、いや待ってくれ。そりゃないだろう。たとえば小さな生物にとって水滴がどういうものか、というアニメによるチャレンジは、映画ファンなら誰でも「アンツ」(1998年)を思い出すはずだ。

…って、また蟻かよっ!
やっぱジブリは蟻に謝るべきだな。

ともあれ、既存かどうかはともかく(元ネタ探し合戦をやってもしょうがないし)、驚きとユーモアと知性に彩られた輝くアイデアは、内田センセは感じたかも知れないが残念ながら自分はさほど感じられなかった。
   
蟻の集団表面張力。


CGアニメと言えば、もちろんピクサーが大好きだ。
例えば「カーズ」。
クルマが人だったら個性やカッコよさを何で表現するのかとか、スタジアムでの群集描写シーンとか、ワイパーやサイドミラーの使い方にいたるまで、確かにクルマだったらそうやるだろうなあ、とか、これがそう使われるのか、と驚かせてくれるような世界観の丁寧な構築や想像力が本当に素晴らしいと思う。
他にも、ウォーリーは掃除ロボだからこうやって長い長い時をひとりで過ごしてきたのだな、とか、おばけ会社があるおばけ社会の仕組みとか、挙げて言ったらキリがないし、きっとみんなそれぞれに心に残る「ハッとした」シーンがあるだろう。

そしてそれらはきっと、ひとりの個性あふれる”天才監督”の天才的ヒラメキの産物じゃなくて、ものすごく優秀なクリエイターたちが様々に議論を繰り返して、アイデアを出し合い、推敲を尽くして創り上げていったものなのだろう。



日本のアニメは文句なく面白いし先進的だし素晴らしいと思う。
でも最近のジブリは、たとえばピクサーの作品群から比べたら、脚本も描写もアイデアも、劣っているどころかすでに周回遅れになってしまっているんじゃないか、と寂しく感じてしまうこともある。
宮崎駿の後継者が云々、という議論をしている場合なのだろうか。
もちろんそれはジブリやアニメ産業だけの問題ではないのだが。




※ついでに※
小人ではないけれど、内田かずひろの「ロダンのココロ」は、老犬から見た人間生活を細やかな想像力で描いた傑作だと思う。毎度ロダンが悟ったように理解するのだけど、そのズレっぷりがキュートで、でもたしかに犬だったらそう思うかもな、と納得させられてしまうような着眼の素晴らしさに溢れている。


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追記エントリ:「ジブリ創作のヒミツとキツすぎる葛藤400日」
http://shikahan.blog78.fc2.com/blog-entry-55.html
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