しかし反撃もここまで

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なにが本当にブラックなのか?

Category: 経営  
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社員の青木くん(仮名)はなかなか優秀なエンジニアだ。
真面目で努力家、少なくとも指示されたことについてはしっかりとやってくれる安心感があるし、お客さん先にひとりで行ってもらっても技術面、人間性ともにまあ心配ない。

年齢も自分より2つ年下のほぼ同世代と言うこともあり、仕事の話はもちろん、休憩時間や飲みの席などでもよく話をする。
政治経済時事などの一般ニュースからアニメやゲーム、漫画、映画、一般書などの文化系ネタ、ギガジン、C-NET、スラドに載っているような技術系の話題、野球、ゴルフ、テニス、競馬、サッカーなどのスポーツ、2chやニコ動のネタ、そして地元や食べ物についてなど、話の内容は幅広い。
やや知識への過信があるものの、よく勉強をしているし、こちらが教えてもらうことも多い。

自分は立場上同僚というものがなく、またしばらく会社に同世代もいなかったため、会社で仕事の合間にこういった話ができることが嬉しくてたまらず、彼と話す機会が次第に増えていった。
単に個人的に楽しいというだけではなく、将来は会社の経営に携わる幹部としても期待していた。

しかし、彼の話に、次第に違和感を感じるようになってきた。
よくよく聞いてみると、幅広いと思われた彼の知見が、どうもほとんどコピペなのだ。
W杯の話も、選挙の話も、ipadの話も、テンガの話も、すべて2chまとめサイトあたりで仕入れてきた情報を、引用してるという断りもなく、知ったかぶって得意げにみんなに話してしまう。
そこに「自分で考えたアイデア」はないし、「自分で調べた事実」もないし、さらに困ったことに「ネタをネタだと理解していない」ことも多い。

で、新着ニュース的なものについてならそれでも別にかまわないが、コピペの盲信で育ってきてしまっているため、結果的にいわゆるネトウヨ的な思想傾向が(現時点では)かなり強い、という結構残念な現状になっている。
「ネトウヨ」なんていうレッテル貼りをするのは本意ではないけれど、本格的な保守本流とか右派というより、ネットで見ただけの知識に感化されすぎており、また思想に一貫性がない、ちゃんとした思想の勉強はしていない、論理が感情や自我の問題の影響下にある、という意味ではその言葉が適当なのだろう。

別に思想も宗教も政治団体も勝手にしてもらって結構だし個人の自由だ。付け焼刃の知識で語りたがる、という意味では自分も大差ない。
しかし、キム・ヨナがいかに汚い手段で金メダルと取ったかとか、庶民がマスゴミやミンスにいかに洗脳されているかを年中聞かされるのはさすがにしんどいし、職場の雰囲気も悪くなる。
堪りかねて時々論拠やソースを突っ込んだり、結論ではなく思考過程の問題を指摘したりしてみると、当然すぐに破綻してしまう。
残念なのは、普段はとても冷静で客観性のある彼も自分のことは客観的に見れず、その場を必死で取り繕い、他人の考えを受け入れる努力ができないことだ。

彼にとって、恐らくネットは偉大な存在だ。
東北の田舎町で育ち、ある時ネットで
「マスゴミのせいで隠されてきた事実を俺は知った!」「戦後民主主義教育に騙されてた!」
と思うような出来事があったのかも知れない。
それはある意味では非常に正しい。
しかし、もしこの世の中に事実が1000あるとしたら、きみは1を学校や新聞で習い、その後2と3をネットで知って得意になっているところだ。
確かに2,3は1に対して重要な反論だ。しかしより重要なのは、きみは1の他に2や3があることを知ったことだ。それは即ち、4や5や6や、その先の未知の事実があることを知ったこと、有り体に言えば「無知の知」を知ったことが何より重要なのだ。

直接でないにしろ、そう彼が気付くように言い続けているつもりだが、反論や批判を受け付けない強力なガード(それは幼いプライドで形作られている気がする)に守られ、少しも伝わっていないように見える。

学歴で言えば最底辺の普通高を卒業した彼が立派な技術者になるまでの道のりは、恐らく強烈な劣等感に支えられていたのだろう。
他人に馬鹿にされたくない、「知らない」「間違ってました」と言ったら負けだ、という気持ちがいつもヒシヒシと伝わってくる。だから知識を得る努力は惜しまない。
それは個人の成長の動機付けという意味では、必ずしも悪いものではないし、責められるものでもない。
でも、本当は知識なんていらないんだよ。自分が無知だ、ということだけ知ってれば。

教養がある、というのは自慢する雑学が山ほどある、ということではなく、自分とは違う他者の意見を理解する、想像する、ということだ。
それに過去はどうであれ、うちの会社では、きみは物知りな技術者としてみんなに敬意を払われているじゃないか。
だからもうそのガードを下ろしてくれてもいいんじゃないか…。


ただの知り合いならば、まあ放っておけって話だろう。
大切な友人なら、お互い徹底的に言いたいことを言い合えばいいし、結果絶交してもしょうがないかもしれない。
しかし、部下と上司として接する場合、特にうちのような小さい会社においてはなかなか難しい。
今彼に去られてしまっては業務上非常に困る。しかし人間的な成長を期待している大切な社員に、一体どう接すべきか、正直わからない。
もちろん「いかに奴の偏向思想を矯正すべきか」と、偏向したことを上から目線で思っているわけではない。
だが、議論の作法とか合理的思考のプロセスとか客観性とか自己批判精神とかはある程度普遍的なものだから、個人的な思想傾向はともかく、少なくともそういった前提を共有することは問題ないはずだ。(→「ゲンダイモンダイが面白い」というエントリでもちょっと触れた)
人間性とは別に、そういう態度は仕事をする上でも必須のものと言って良い、という言い訳もある(彼は仕事上でも間違いを認めない、失敗をごまかす、という傾向がある)。
ついでに言えば、例えばすでに同世代でこんな本を書いてる人もいるのに、今時サヨクの陰謀が云々、みたいな陳腐な議論を自慢気に開陳してる場合じゃないだろうに…という残念感も、まあ、ある。

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「そもそもそんな奴が幹部候補なのかよwどんだけ弱小企業www」と笑われればその通りだが、俺は彼の仕事ぶりは評価してるし、それに何より俺は彼が結構好きだ。たまに自分の頭、自分の言葉で語ったときは、口舌滑らかでなくとも、とても面白いし良いアイデアを出してくれる。もしその能力を、古びた鎖から解き放ってフルに活かせたら、どんなに楽しい議論が出来るだろう…。
だから出来るならば何とかしたい、と、傲慢かも知れないが思う。

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さて、ここで話が変わる。

餃子の王将のブラック研修、というのが一時話題になった。
テレビで放映された新人研修の様子がカルト宗教じみていてキモい!ブラック確定!という類の話で、その映像や反応を見たことのない人でも、大体どんな話か想像がつくだろうし各々意見もあるだろう。



その是非を言う前に、じゃあブラックじゃない、ホワイトな企業って一体なんだろう?
とりあえず違法行為の有無や待遇の良し悪しじゃなく、ここでは社員のモチベーション向上のために会社がとる態度、という話に絞って考えてみたい。

例えば「アットホームな職場です!」と銘打って、誕生日会をしたりお互いを褒め合う変な会を開いたり、どうでもいいことですぐに表彰したりするような会社はどうだろう。
残念ながらそれは、待遇が悪く定着率が低い企業が使う常套手段として昔から有名だ。
金銭やスキル、人間的な成長を会社が準備できなければ情で縛るしかないからだ。

また、人材輩出企業として名が知られ、学生の人気も高い某大企業では、社員が
「35才過ぎで会社にいると、なんで独立しないの?って言われちゃうんだよね」
と得意げにうそぶくそうな。独立心がありチャレンジ精神旺盛なデキるエリートサラリーマンってステキ!
実際社員の何%が独立し、そのうち何%が成功(定義は難しいが)するのかは知らないが、とりあえずこの企業は、そう社内外の人から思われることによって優秀な人材の確保が出来ると同時に、賃金が高くなる年齢になると勝手に一定数が辞めてくれる、つまり総人件費の抑制が出来るというメリットも得ている。
そしてそれは、恐らくは&驚くべきことに、ある程度会社側が意図しているものなのだ。


社員のモチベーション向上を指南したビジネス本は山のようにあり、人間関係もアメもムチもすべてマネージメント論で語られる範疇の領域だ。
あなたが尊敬するあの先輩の態度も、部長から言われたグッと来る言葉も、単に売れ筋の本から借用してあなたに始めて使ってみただけかも知れないのだ。

一方、王将のように体育会系・軍隊方式・宗教じみたやり方、というのは現代では非常に毛嫌いされる。
自分も学生の時は嫌悪していたし、経営者となった今もこういうやり方はまずやらない。
とは言え、社員を管理する立場になると、自社で取り入れないにせよこういった行為にある程度の合理性があることはわかるようになった。
職場や余興などで恥をかくのも、大人になるためのある種のイニシエーション(通過儀礼)であり、適度であれば本人の成長にとっても必要なものだと理解した。
牛角で「はい喜んで~!」とアルバイトが必ず掛け声を掛けるのも最初はギョッとしたが、チェーン店の末端社員に至るまでマニュアル化することで接客レベルや品質の底上げになるだろうことは想像が付くようになった。
創造的で自主性があるご立派な方々は「信じられない、耐え難い」と叫ぶだろうが、現実的にはこういうやり方の方が性にあっている、という人も、世の中にはたくさんいるだろう。それが過剰でないならば、管理され、レールを敷かれ、指示されるのは効率が良いし、とても楽なことだからだ。


つまりアットホームな職場も独立心旺盛な社員育成も体育会系企業も、どれが良いか悪いかとかいう単純な話ではなくて、当然それぞれ良い点と悪い点があり、簡単にはブラックとかホワイトなんてことは言えないのだ。
少なくとも王将の研修を見て「自分はその方法は取らずこうやって後輩に指導する」「会社として新人育成はこうすべき」という具体策も代案もなく、安易にブラックだと大騒ぎするような人は社会人としては些か幼稚だし(というか恐らく大半は学生だろうから、非難するのではなくて同情するが)、逆に「部下のやる気を引き出す魔法のことば!(vs自称クリエイティブ男子編)」みたいな安い本を読んだ薄っぺらいオヤジにガンガン釣られてしまう可能性がある、という自覚は持ったほうが良いだろう。
実際、企業案内なんてのはそんなテクニックの見本市みたいなもんだ。
ついでに言えば本田由紀氏が指摘した「やりがいの搾取」も、構造的には同じようなもんだろう。
世の中そんなに甘くはないんだよな。

ただし、じゃあ逃げ場がどこにもないじゃん→自宅警備員、とは考えず、ある程度自覚的、主体的に、場合によっては楽しんで前向きにロールプレイすることも出来る。
カルト教団に騙されたんじゃ身包みかっぱがれてケツ毛も残らないが、企業で鍛えられてスキルアップしたり金を稼ぐことの厳しさを身をもって知るのは(程度の問題はあるが)現金も含めて得るもの、残るものも大きいだろうし必ずしも悪いことじゃない。
また例えば城繁幸氏の言うように、現実の構造を理解した上でプラグマティックに雇用契約を履行しよう、というのもひとつの前向きな立場だろう。
「無駄な「ブラック会社」探しはもうやめよう」(J-CAST)

鈴木謙介氏が「思想地図〈vol.3〉」に寄稿している「設計される意欲」という文章も、安易な悪者探しをしないよう丁寧に気を遣いながら経営における意欲の設計の可能性について論じていて面白かった。

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という訳で、話はうちの青木くんに戻る。

労働基準法上の思想信条の自由を持ち出すまでもなく、こういう話はあまり関わらずにスルーしておくのが正解だろう。
自分もここでいろいろと誠実に悩んでみせたが、実際はそこまで突っ込む気合も度胸も信念もない。
きっとそこそこテキトウにやるだろう。

いや、でも待てよ、会社の利益を考えたら、
「なるほど青木くん!知らなかったよ。さすがだねえ!オレも○○党に一票入れるよ!
 三国人こえーよ!ついでに美しい国日本の将来のために、仕事もバリバリ頑張ろう!」
ぐらい言った方が、少なくとも短期的には良いんじゃないか?
その上、青木くん自身は、理解があって価値観を共有できる社長のもと、やりがいのある仕事を任されている、という充実感を得られるに違いない。
彼は自己批判や客観視をしないのが問題?いやいや、自分の状況を認識し始めたら、こんな小さな会社に薄給でいる意味を考えて、とっとと出てっちゃうかも知れないから黙っとけ!

逆に自説(ただしコピペ)を気持ちよく語る彼に因果と相関の違いを説明したり、ネタをガチで受け止めていることの危険性を指摘したり、報道や統計についてのリテラシーを理解させたり、自分が他人からどう思われているか、自分の思考法が如何に幼稚か、世の中には自分より頭のいい奴がいくらでもいて、知らないことが無限にあるのだという当たり前のことを教える、言いかえれば自分と向き合う辛い作業をさせることは、相当困難でリスキーな作業だ。
リターンも短期的にはないかも知れないし、それどころか彼は、理解がない上にマスゴミに洗脳されてる愚鈍な社長のもとで、こんなきつい仕事やってられっかクソ野郎!と辞表を出すことになるに違いない。


社長として、会社としては、どちらを選べばブラックだろう。
青木くんにとっても、本当にブラックなのはどっちだろう。


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