しかし反撃もここまで

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What a Terrible Life!!

Category: 映画  
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戦前から続く大手製菓メーカーであるヨシハラ製菓(仮)と言えば、その独自の商品開発力と幅広いラインナップによって全国的に有名で、長年シェアトップを維持している業界の盟主だ。特に地元の関西地区では非常に人気が高く、子どもから老人まで愛されている。
木元さんは、そのヨシハラ製菓に勤める非常に優秀な職人だった。

器用さ、手際の良さ、独創力、新しい技術に対する感受性も素晴らしく、これまで会社の事業に大きく貢献してきたし、プロの職人として業界では尊敬の対象になっていた。
元々エリートではなく、いくつか職を転々とした後に中途採用で入社した苦労人だ。希望の製造部に入ったものの、しばらくは不遇を味わったが、その腕が評価されるにつれメキメキと頭角を現してきた。
自身も下積みが長かったためか、後輩の面倒見もよかった。尊敬と親しみを込めて「アニキ」と呼ばれ、彼を慕う部下が自然と集まるようになった。
また先輩への気遣いにも優れており、特に当時直属の上司だった松井部長には公私共に目をかけられていた。
関東新工場立ち上げの際には製造部門の責任者に抜擢され、期待通りに輝かしい成果を残した(ちなみにこの工場の主力商品で当時大ブームになった『GOTZ』は自分も大好きだった)。
松井部長も現場上がりの天才的な職人だったので、お互い通じるものがあったのだろう。二人は強い信頼で結ばれていた。

木元は仕事には相当厳しく、部下を激しく叱責することもあり、また粗暴な振る舞いも多かったが、昔から上下関係を重んじることが良しとされる社風もあり、さほど問題にはならなかった。むしろその古き良き日本的な組織哲学や男らしさが積極的に評価されることの方が多かった。

やがて「現代の名工」「カリスマ職人」として雑誌などで取り上げられる機会も多くなり、一般的な知名度も上がった頃から、木元は次第に現場から遠ざかるようになった。
当初は自身の経験を元にした仕事術や技術論についてのインタビューや講演会を開く程度だったが、彼自身が有名になったことで、趣味の園芸について語った本まで「アニキ流」として出版するようになった。
元々凝り性の職人気質なので、内容もそれなりに充実したものではあったが、とは言えさすがに「畑が違う」印象は拭えなかった。
彼自身、職人だけで終わりたくないという欲求があったのかも知れないし、金銭欲、名誉欲もあったろう。それは別に責められることではない。しかし、彼を単なる職人にしておくより、会社の知名度アップや営業活動の為に積極的に利用しようと考える経営陣の思惑とも合致したしたことで、止める者がいなくなってしまった。

会社は木元に、新たに立ち上げたばかりの「音楽事業部」のプロデューサーに就くよう辞令を出した。驚いたことに、それは所属アーティストの広報などではなく、素人の彼に作詞、作曲をさせる、つまりアーティストになれ、というものだった。
会社は彼に、他社がやっかむほどの十分な予算を組み、また他の業務も従来通りやって構わない、という破格の待遇を与えた。
無謀だと言う人もいたが、木元は二つ返事でOKした。TV出演などを通じて音楽業界をいくらかは知っていたし、また以前他社のCMソングを歌った際には意外と評判が良かったので、それが自信になっていたのかも知れない。肩書きが好きな彼には「アーティスト」という響きも心地良かっただろう。
何より、木元が慕う松井が事業部長として立ち上げに関わっている、というのも心理的には大きかったと思う。

世間はこの試みに期待した。あの「アニキ」が、「アニキ」以上に天才と謳われたMが作る音楽に期待した。
きっと素晴らしい職人だった木元や松井のことだから、まったく新しい音楽を作るのではないか、と。

しかし、この試みはあまりうまく行かなかった。
松井はかろうじてヒットと呼べる程度のアルバムを作った。批評家筋や広告のプロからは「勉強不足」と一蹴されたものの、松井のファンからは、その哲学風、難解げな味付けが好意的に受け止められた。
一方、木元の作品の出来は、素人目にも褒められたものではなかった。松井とは違い、極めてオーソドックスなスタイルで、音楽理論に敬意を払うそぶりは見せながら、出来上がったものは非常に退屈で、その上完成度の低い惨めなものだった。

松井も木元も、会社の潤沢な予算やバックアップのお陰で、引き続き「門外漢」の音楽を作り続けた。
松井は自分の天才性、カリスマ性を全面に打ち出す戦略に出たが、評判は前作以上に悪かった。職人の世界では卓越したセンスを持っているが故に、さほど才能や知識のない他分野についても、センスだけで乗り越えようとする姿勢が彼自身の限界を露呈してしまっていた。長年コンビを組み片腕と呼ばれた秘書ら取り巻き連中も、彼を裸の王様にし、事態を悪化させているように見えた。

木元は松井の失敗を知ってか知らずか、意外に手堅く作品をまとめようとしていた。
しかも次の曲は、彼の本分である製造の現場が歌詞のテーマだということで、彼の職人としての見識の深さや腕の確かさを知る者ほど期待した。
しかしまたしても、凡庸な歌詞を拙いメロディに乗せただけの代物が出来上がった。
「明日が今日より幸せになる。」
という安っぽいサビに、専門家は失笑した。Wonderfulだと?
「What a Terrible Life!!」

だが驚いたことに、ヨシハラ製菓は自らが音楽賞を創設し、彼ら音楽事業部の作品に賞を与える、というマッチポンプを繰り広げた。その上、若手の職人を次々に音楽事業に抜擢し、その作品とやらをお菓子の販路で強引に売りまくった。
最初は期待し、それなりに満足していた元々のファンたちも、次第に木元や松井、そしてヨシハラ製菓のやり方に違和感を感じ始め、ついには憤りすら覚えるようになった。
「もう、俺たちの松井や木元をカリスマ扱いして商売に使うのはやめてくれ!」と。

**************************************

これは松井や木元の個人の資質の問題なのだろうか。
もしくは、彼らの素人ミュージシャンとしての拙さを揶揄すれば良い問題なのだろうか。
社会人として、ビジネスマンとして働く以上、より儲けたい、有名になりたい、と思うのは決して悪いことではないし、自分の限界を超え、新しい分野に挑戦する意欲は誰に否定されるものでもない。会社人とは言え自分の人生設計は自分で決めるものだし、その責任を自分が取るのであれば、何をやろうが、何を言われようが、己の信ずる道を行けばいい。

ではヨシハラ製菓という会社や、それに絡む物流、小売の問題なのだろうか。
素人集団の音楽事業部を立ち上げようと、マッチポンプで盛り上げようと、それは私企業の自由だし、結果的に赤字を出した経営手法の是非は論じることが出来てもそれ以上は述べにくい。「お菓子も音楽もバカにしている」とか「カネに困ってる優秀なアーティストに投資した方がいい」という批判もあるが、それは結果論でしか無いし、基本的には余計なお世話だ。それに、効率が悪そうに見えても、このまま続けていけばいずれ大きなヒットや素晴らしい作品が出ないとも限らない。
物流と小売の支配についても、資本主義である以上、違法行為がない限りは問題はない。それに物流や小売だって大はしゃぎで協力しているのだし。


そもそも私はヨシハラ製菓のお菓子が大好きだった。
「安くておいしい」をモットーにする吉木の商品は、金がなくても小さな幸せを感じることが出来た。
自由な発想で生まれる個性的な商品に、いつも心をときめかせてきた。
でも大人になるにつれ、ヨシハラ以外のお菓子の味も知ってしまった。
小さな店ながらも腕の立つ職人さんが作った、強烈に酸っぱくて癖になったあの味とか、海外に行ったときに食べた、苦いけど何故か胸がすく気がしたあの味とか。

同時に、ヨシハラについてもいろいろなことを知った。
社風は想像と違い、自由どころかひどく窮屈で、典型的な体育会系企業、最近の言葉で言えば「ブラック」だということを知った。先輩には絶対服従、逆らおうものなら退社に追い込まれることもザラだという。
もちろんヨシハラにも、現代的で自由な部署もあると聞く。実際、若手が積極的に企画や開発に参加できる風土は、他のどの会社よりも進んでいるだろう。年功や序列を重んじるとは言え、給与は昔から相当に実力主義だ。
しかしつい先日も、木元の後継者と期待され、音楽事業部で一番の実績をあげていた高輪という若手のホープが、製造部の後輩を執拗にいじめていた、と暴露される記事が出た。少し前には幹部の一人が他社の若手を公の場で恫喝する、という異常な事件も起きた。
それはかつて皆が賞賛した「アニキ流」の組織論と本質的には同じことだということはあまり語られなかった。
いやむしろ、お菓子や音楽ではなく、そういった構造や人間関係を味わってこそ通だ、と分析する声すらあった。

でもそれ以上にショックだったのは、私が大好きだったお菓子は、劣悪な環境、低賃金、長時間労働の下に置かれた工場労働者に「夢」という名の餌を与えて生産されたものだったことだ。
庶民の味方を気取った「安くておいしい」という社是は、一万円のランチを食べながら貧しい人を酷使することや、なけなしの銭を払ってお菓子を買う客によって支えられていたのだ。


つまりこれは、木元でも松井でもヨシハラ製菓でもなく、私たちの問題なんじゃないだろうか。
みな、ヨシハラ、そして松井や木元が演じる「カリスマ」や「組織論」に、あるいはその甘いお菓子に、どんな夢を見てきたんだろう。
失われた日本的経営、家父長的なものに対する郷愁?長いものには巻かれろという現実的な処世術?コミニュケーション力や人間関係のヒント?まさか園芸のテクニック?
それとも、私が「お菓子」に、それこそ甘い幻想を抱き過ぎていたのだろうか。あるいは「お菓子」が作られるまでの厳しい現実を知り過ぎてしまったのだろうか。
お菓子は所詮お菓子でしかない。甘くて、楽しくて、おいしくて、それで終わり。現実から逃避するためだけのもの。そこにメッセージもテーマも批評もない。
それで本当にいいんだろうか?


ヨシハラ製菓は今後も業界で圧倒的な立場を維持し続けるだろう。実際、お菓子のおいしさや新製品の量では他社の追随を許さないのだから。
しかし最近、大規模な流通経路には乗らないものの、クチコミで話題になったり、通販で手軽に買えるようなものも増えてきた。
それは食べる人の感覚や常識に挑戦し、挑発し、時には不快にすらさせるようなものだが、単に甘いものだけに飽きた多くの人に、強く支持され始めている。

長らく続いた「お菓子ブーム」は曲がり角を迎え、また日本の社会が変化していく中、「お菓子」ってなんだろう、「安くておいしい」ってなんだろう、という根源的な問題が問い直されるだろう。
そしてその時は、今までヨシハラ製菓が仕掛けた「お菓子ブーム」の手のひらの上で、うまいまずいを語ったり、年末のお菓子グランプリで盛り上がったり、チョコの含有量を測定して優劣を語ったり、パッケージの可愛さで飛びついたり、「お菓子がある場の空気」やお菓子のキャラと組み合わせを分析したりして批評した気になっていた我々の上にも、その問いが重くのしかかることになるだろう。


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